最近、JTCSに上記の論文が投稿され、現在の日本のA型解離手術の実情が分かる内容だったので、ご紹介したいと思います。
対象患者と患者背景
JCVSDに登録された2013年~2018年の間にopen surgeryを施行した急性A型解離患者29486人が対象。(左室形成術や先天性心疾患手術、不整脈手術などを併施した例や血管内治療例は除外)
6年間で患者数は増加傾向。→早期発見できるようになったことが影響しているかも?
- 男女差はほとんどなし
- 平均年齢59.8±14.2歳
- 結合組織疾患患者は1.2%
術前状態
- 13%が術前に意識変容あり
- 12%が心原性ショック
- 11%がmoderate~severe AR
- 2.3%が心筋梗塞
- malperfusionに関してはデータなし。
手術
78.7%が即座に緊急手術を施行。
術式
- 上行置換が69.3%
- 弓部置換が29.3% (Frozen Elephant Trunkは全患者の12.2%で使用)
- AVRは4.7%で施行。
- Bentallは3.2%で施行。
- 弁形成は1.5%で施行。
- STJ fixationは2.3%で施行。
- 自己弁温存大動脈基部置換は0.6%で施行。
人工心肺
- ACPが73.5%、DHCA+RCPが17.1%、DHCAのみが9.4%
- CPB時間は平均216±90.1分
- 心停止時間は平均132.1±59.8分
- 最低体温は24.6±3.2℃
予後
死亡率
- 30日死亡率は9.2%
- 院内死亡率は11.0%
合併症
- 脳梗塞(11.5%)
- 一過性の神経障害(3.9%)
- 新規の透析導入(7.3%)
- 脊髄障害(3.9%)
- 長期人工呼吸器装着(15%)
死亡・合併症の傾向
年齢による傾向
高齢であることは、院内死亡、新規の透析導入、長期の人工呼吸器装着のリスクだが、脳梗塞や脊髄障害のリスクにはならない。
術式による傾向
- 上行置換のみだと透析導入が少ない。
- 上行置換と弓部置換での脳梗塞、脊髄障害、長期人工呼吸器装着に差がない。
- FET例で脊髄障害が多い。→Adamkiewicz動脈閉塞+胸部下行の偽腔内血栓拡大による?

shingari
- 低リスクである
- entryが弓部にある
- 弓部分枝が解離している
- 結合組織疾患がある
上記の場合に弓部置換が考慮されます。
- 弁置換やBentall施行患者の早期死亡率がより高い。
- 弁置換、Bentall、弁形成施行患者で人工呼吸器装着期間が長期化しやすい。
- Bentall施行患者で透析導入が多い。
脳保護による傾向
- 脳保護法による早期死亡率の差はなし。
- DHCA+RCPでは、脳梗塞や長期人工呼吸器装着が少ない。
- ACPでは、脊髄障害、透析導入が高い。
→DHCA+RCP患者の方がシンプルな症例が多いからかも?
人工心肺による傾向
- CPB時間(≧4.5時間)、心停止時間(≧3時間)が長いとoutcome(院内死亡、脳梗塞、長期人工呼吸器装着、透析導入)が悪い。
- Deep hypothermia(<20℃)、Mild hypothermia(>30℃)で院内死亡率が高いが、>30℃の患者では脳梗塞や長期人工呼吸器装着が少ない。
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